大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌] (Manyoshu 1507)

伊加登伊可等
有吾屋前尓
百枝刺
於布流橘
玉尓貫
五月乎近美
安要奴我尓
花咲尓家里
朝尓食尓
出見毎
氣緒尓
吾念妹尓
銅鏡
清月夜尓
直一眼
令覩麻而尓波
落許須奈
由<米>登云管
幾許
吾守物乎
宇礼多伎也
志許霍公鳥
暁之
裏悲尓
雖追雖追
尚来鳴而

地尓令散者
為便乎奈美
<攀>而手折都
見末世吾妹兒

Modern Japanese

いかといかと
ある我が宿に
百枝さし
生ふる橘
玉に貫く
五月を近み
あえぬがに
花咲きにけり
朝に日に
出で見るごとに
息の緒に
我が思ふ妹に
まそ鏡
清き月夜に
ただ一目
見するまでには
散りこすな
ゆめと言ひつつ
ここだくも
我が守るものを
うれたきや
醜霍公鳥
暁の
うら悲しきに
追へど追へど
なほし来鳴きて
いたづらに
地に散らせば
すべをなみ
攀ぢて手折りつ
見ませ我妹子

Hiragana Pronounciation

いかといかと
あるわがやどに
ももえさし
おふるたちばな
たまにぬく
さつきをちかみ
あえぬがに
はなさきにけり
あさにけに
いでみるごとに
いきのをに
あがおもふいもに
まそかがみ
きよきつくよに
ただひとめ
みするまでには
ちりこすな
ゆめといひつつ
ここだくも
わがもるものを
うれたきや
しこほととぎす
あかときの
うらがなしきに
おへどおへど
なほしきなきて
いたづらに
つちにちらせば
すべをなみ
よぢてたをりつ
みませわぎもこ

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