橘歌一首[并短歌] (Manyoshu 4111)

可氣麻久母
安夜尓加之古思
皇神祖<乃>
可見能大御世尓
田道間守
常世尓和多利
夜保許毛知
麻為泥許之登吉
時<及>能
香久乃菓子乎 可之古久母
能許之多麻敝礼
國毛勢尓
於非多知左加延
波流左礼婆 孫枝毛伊都追
保登等藝須
奈久五月尓波
波都波奈乎
延太尓多乎理弖 乎登女良尓
都刀尓母夜里美
之路多倍能
蘇泥尓毛古伎礼
香具<播>之美 於枳弖可良之美
安由流實波
多麻尓奴伎都追
手尓麻吉弖 見礼騰毛安加受
秋豆氣婆
之具礼<乃>雨零
阿之比奇能
夜麻能許奴礼波 久<礼奈為>尓
仁保比知礼止毛
多知波奈<乃>
成流其實者
比太照尓 伊夜見我保之久
美由伎布流
冬尓伊多礼婆
霜於氣騰母
其葉毛可礼受 常磐奈須
伊夜佐加波延尓
之可礼許曽
神乃御代欲理
与呂之奈倍 此橘乎
等伎自久能
可久能木實等
名附家良之母

Modern Japanese

かけまくも
あやに畏し
天皇の
神の大御代に
田道間守
常世に渡り
八桙持ち
参ゐ出来し時
時じくの
かくの木の実を 畏くも
残したまへれ
国も狭に
生ひ立ち栄え
春されば 孫枝萌いつつ
霍公鳥
鳴く五月には
初花を
枝に手折りて 娘子らに
つとにも遣りみ
白栲の
袖にも扱入れ
かぐはしみ 置きて枯らしみ
あゆる実は
玉に貫きつつ
手に巻きて 見れども飽かず
秋づけば
しぐれの雨降り
あしひきの
山の木末は 紅に
にほひ散れども
橘の
なれるその実は
ひた照りに いや見が欲しく
み雪降る
冬に至れば
霜置けども
その葉も枯れず 常磐なす
いやさかはえに
しかれこそ
神の御代より
よろしなへ この橘を
時じくの
かくの木の実と
名付けけらしも

Hiragana Pronounciation

かけまくも
あやにかしこし
すめろきの
かみのおほみよに
たぢまもり
とこよにわたり
やほこもち
まゐでこしとき
ときじくの
かくのこのみを
かしこくも
のこしたまへれ
くにもせに
おひたちさかえ
はるされば
ひこえもいつつ
ほととぎす
なくさつきには
はつはなを
えだにたをりて
をとめらに
つとにもやりみ
しろたへの
そでにもこきれ
かぐはしみ
おきてからしみ
あゆるみは
たまにぬきつつ
てにまきて
みれどもあかず
あきづけば
しぐれのあめふり
あしひきの
やまのこぬれは
くれなゐに
にほひちれども
たちばなの
なれるそのみは
ひたてりに
いやみがほしく
みゆきふる
ふゆにいたれば
しもおけども
そのはもかれず
ときはなす
いやさかはえに
しかれこそ
かみのみよより
よろしなへ
このたちばなを
ときじくの
かくのこのみと
なづけけらしも

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